このページの運営者が出会った思い出深い国と人々達、独立間もないエストニア共和国を訪れた時の2ヶ月間の足跡を当時の日記と記憶で綴る訪問記
1993年北欧フィンランドヘルシンキからエストニアへの訪問記凍った海を進む船のトップイメージ
エストニアとの出会い

Index

1:プロローグ

2:旅立ち&期待1

3:旅立ち&期待2

4:いよいよ到着

5:不安&ピンチ

6:ついに再会

7:モスクワでの出来事

8:モスクワでの出来事2

9:モスクワでの出来事3

10:いざタリンへ

11:いざタリンへ2

12:いざタリンへ3

13:ホームタウンパルヌ



”私とエストニアとの出会い” 8:モスクワでの出来事2

食事に行くのは良いが、この部屋に貴重品を残していって大丈夫なのだろうか?と一抹の不安がよぎり、とりあえず現金とパスポート、航空券は特性の腹巻に入れてもって行く事にしてかさばる鍵を手に部屋を出た。

部屋の中に居た時とは違いドアから外へ一歩踏み出ると薄暗く長い廊下の雰囲気に一気に気分が引き締まる思いであった、、、ホテルの中なんだからそんなに治安が悪いという事もないだろうけれど何しろ暗い、そしてど〜も怪しい雰囲気の人間もちらほら目に入る、、、当然何処から来ているのかは解らないが日本では余り見かけない感じの人達ばかり、、完全にアウェーの中のある種おのぼりさん的日本人の若者一人、、、心細かった、、

例のエレベーターの方に歩いていくと空港で見かけたビジネスマンらしき黒人も丁度きていてどうやら彼もレストランに行く様だ、彼は黒人だが東洋人のボクにとってはお互いアウェー同士の仲間みたいな感情を抱き思い切ってつたない英語で話しかけてみた。

すると何やら困ったような顔をして何か言っているが良く分からない、、、「ん?どうしたんだ?、、、俺の英語がまずいのか?、、、」そんな事を思っていると、何とか聞き取れた言葉の中に NO ENGLISH、、、そうなんだ、英語が解らないんだ、、、外人は大抵英語はしゃべるもんだと勝手に思っていたボクにとってはある種の驚きと、英語が駄目なのは俺だけじゃないわけか、、、という事で更に親近感が沸いていた。

何処の国から来たのかとか聞いたかどうかは忘れてしまったが、フランス語を喋ると言う事は理解した、、なるほど、、アフリカはヨーロッパの何処の国に占領されて植民地にされたかで話す言葉が決まる訳だからフランスの植民地出身という事なんだろう、、、その当時は何事においても未熟で不勉強であったボクはその意味を余り深く考えてはいなかったのだが、今の世界の混乱はこういった欧米の身勝手によって作り出されているという事に気が付いた今は、恐らく当時とは又違った感情で彼らに対するのだろう、、、

特に話は出来ない彼とはエレベーターを降りて別れ、一応受付でミールクーポンを見せてレストランで食事が出来るのか?みたいな事を聞いて、まぁ出来るようだという事を確認してレストランがある反対方向にロビーを抜けて行った。

レストランらしき部屋に入るとそこにはテーブルと椅子がならび他に特に何もなかったが部屋自体は比較的大きく天井も高い、ただここもかなり暗い、、、がしかし、レストランだし各テーブルには電気代の節約か電球の不足か分からんがろうそくが焚かれていてそれはそれで結果的に何となく雰囲気は案外良く面白かった、ただそんなに暖房が効いている感じがしないのはレストランが一階の出入り口があるロビー近くだからだろうか、、。

客はまばらに居た、特に係員がいるわけでもなく、それぞれがそれぞれの好きな所に座っていたようだ、、テーブル自体は大きかったように思う、、なので他の人が同じテーブルに座っていてもあまり気にならない距離だったと思う、、一人だし夜で外の眺めも何もないしとりあえず座ろうと入って直ぐ辺りのテーブルに腰掛けた、同じテーブルには黒人の若いと思われる女の人等が座っていた。

その黒人の女の人も食事を待っている様子、で、他に居た客を見て何を食べているのか等しばらく観察していると皆略同じ様なものがテーブルに並び無言で黙々と食べていた、、、実に静かな、しかし何となくどんよりと重いレストラン内の雰囲気であった、、、

そこにある光景はホテルのレストランというよりは刑務所の食堂といったら言いすぎだろうか、、、しかしそこにはサービスという概念が根付いていない?ソ連的な冷たく笑顔も無くある種無礼な対応のホテルじゃそう感じても仕方ない(悪気は無いんだろうが、、、)、、、、従業員はウエイターの一人だけ、客が来たらミールクーポンを回収して決まった食事を運んでくる、特に何も会話はない、ウエイターは只それを繰り返していた。

黒人の彼女とボクの分もしばらくして一緒に来た、、、ちょっと遠めで見ていた他の客の食事の内容に少し驚いていたボクであったが、実際に目の前にしてこれは一体何だろうか?と大いなるクエッションマークが浮かんでいた、、、その食事を見た黒人の彼女も同じ様な様子、、、お互い顔を見て、まぁしょ〜がないね、、みたいな相づち、、、一応その食事は暖かくほんのりと湯気が出ている、、、ウエイターが持ってきたのは一枚の金属のお皿にのった何らかの肉、少しとろみがかったソースが絡んでいるほんの少しの豆、これは冷たかった、、、それだけであった。肉には特に何もソースは掛かっておらず肉は焼いたものではなくゆでたような感じであった、、、量的にはマックのハンバーガーのハンバーグ一枚位だっただろうか、、、

量的にはかなり少なかった、で、黒パン一切れがソーサー的な皿に一枚と透明なカップの紅茶らしき温かい飲み物も出された、、、とにかく腹ペコで喉も渇いていたので何でもありがたく頂いた、、、生まれてはじめて食べる黒パンは何と言うか、正直おいしくなかった、、、(今では好きになっているから不思議だが、、、)肉は多分単なる塩茹でみたいなものだったのだろう、、、味は、、、う〜ん、、、茹で過ぎと言った感じか、、、ダシをとったというか、、、今でも一体何の肉であったのかは不明である、、、しかし当時のロシアの社会情勢を考えると少々ヤバイものが使われていてもおかしくない、、、まぁ腹が下りやすい体質のボクが食あたりしなかったから多分大丈夫だったのだろうけれど、、、

薄い透明のガラスのカップに入った紅茶?らしき飲み物はある意味斬新だった、最初は熱くてもてないくらいだった、、これは後で知ることだが冬が寒いロシアではこういうタイプの紅茶が普通で、熱い紅茶でかじかんだ手を一緒に温めるという意味らしい、、、とにかくあっという間に終わった食事にある意味ウケた、、、、同じテーブルに座っていた黒人の彼女も食事を終え、何ともいえない食事にお互い苦笑した。

そんな状況を共有しただけあってつたない英語であったが案外緊張する事無くすんなりと話しかけていた、、、ほんの少し会話をした感じだ、、、が、何せ英語力が圧倒的に無い当時のボクにとってはその会話を楽しめるだけの能力は殆ど無かった、、、特に他にサービスがあるわけでもなく何もする事がないので彼女と別れ席を立ちレストランを後にした。

レベルのずれがあるエレベーターも既に解っているので特に驚きは無かった、若さというか順応力はある意味それなりにあったボクであった。

部屋に戻り少しくつろぐと少ない食事ではあったがリラックスしてきてそのままその日は眠りに落ちた。

翌日起きたのは何時ごろであろうか部屋に時計がないのでどこかに置いた自分の腕時計を探して確認すると疲れていたせいか昼ごろまで寝ていたようだ、、、で、今日の食事はどうなっているのだろうか、、、そういった何もかもが分からず、またそれら一つ一つを自分で確認する必要がある、、ある種かなりの多くのハードルを越える必要があった、、、

しかしできれば言葉でやり取りするコミニケーションは避けたい、、、英語が駄目なボクはそれが殆どできないからだ、、、それに加えロシアなまり的殆ど理解不能な英語らしき言語をしゃべる極一部の従業員とその他大多数のまったく外国語をしゃべらない従業員(まぁしゃべっても当時のボクじゃ理解は難しかっただろうが、、、)、、、普通なら外国語を理解すべき受付でさえ英語を理解しない時もあった、、、ある意味すごい、、、何か聞こうとしても表情を一切変えずに首を横に振りじっとこっちを見るおばさん従業員、、、怒っているように見えるそんな怖いおばさん達、、、そんな訳で、、なるべく何かを尋ねる状況は作りたくなかった、、、

端的に、最重要な事に絞って聞く事をまとめ、何とかそういった情報を理解する従業員を見つけ、またその人間がちゃんと英語を理解し、分かりやすい英語できちんと説明できるというレベルでなければ俺が理解できない、、、そう考えると既に疲れてくるボクであった。

食事といっても例のあのレストラン以外何の選択肢も無いから又受付に行きミールクーポンをもらうしかない、ということで、又部屋を出る支度をして1階のロビーにある受付へ向かった、毎回ではなかったが部屋を出た廊下には何とも迫力のある軍服らしき制服を身につけた女性が一人立っていて宿泊客に鋭い視線を向けていた、当然ボク自身もじっと見られていた、、特に何もするわけではないがそのたたずまいが日本のホテルとはまるっきり雰囲気を醸し出していた。

受付に行くとすんなりとミールクーポンをもらえた、多分パスポートか何かを見せたように思う、、、それで又あのレストランに行った、今日は日中なので窓から日が差し込んでいるので暗くは無いが、とにかく装飾が無いというか、殺風景というか、飾り気が無い寂しい感じのレストランをはっきり見渡せた、、、良く見れば細かな所に痛みがちらほら見受けられた、、、で、時間的にはまだ人が働いている時間なのでレストランの床やロビーをモップで拭いている太った年配の掃除のおばさんとかもいた。

昨夜と同じウエイター、やっている仕事の内容は同じ事のくり返しだった、、、他に宿泊客もまばらに居たが今日は一人テーブルに座った。どんな食事が出てくるのかな〜と思っていると、黒パンと紅茶らしき温かい飲み物が出てきた、、、他には無いのか?、、、と何となく見える他の宿泊客が食事の内容を見ると、同じ様にパンと飲み物の様である、、、食事はそれだけだった、、、う〜んさすがにちょっと足りない、、、テーブルにはメニューらしき物は一切無い、つまり何もない、、、、現地通貨のルーブルは当然持っていないし、、、ウエイターとコミニけーションは取れそうもないし、、、そんな事を思っているとさっきの掃除の年配の太ったおばさんがこっちの方に近づいてきた、、、「ん?、、何だろう、、、」とボクはその年配のおばさんを見ていた。


 つづく  エストニアとの出会い 「モスクワでの出来事3」