ビルの中に戻ったのは良いが、行くところも無く公衆電話がある所は外に面していて寒いのでさっき降りてきたエスカレーターを上って到着した時に通ったロビーの方が暖かいのでそこに行きどうするかを考えることにしました。
ロビーに戻ってみるともう殆ど人はおらず一人か二人こちらをチラッと見ながらもなんか明らかに路頭に迷っている様に見える旅行者に係ると面倒くさい(と勝手に想像して)とばかりに通り過ぎていくのを眺めながら、、「あ〜ぁ、だれか助けてくれないかな〜、、、友人のマレを知っている人はいないかな〜、、、」等と有り得ない事を思いながらオドオドするのもみっともないんで、意味も無く強がって平気なフリをしている愚かなボクでした、、、
もう誰も居ないロビー、ついさっきまで到着客でごった返していたのが嘘のように静かです、、、まだ明かりがついていたから良かったのですが、いつまで明かりがついているのか、いつまでこの場所が開いているのか、、、とにかく不確定要素だらけの状況でどうその状況から脱出するのかを冷静に考えられないボクは、とにかく何か役立つものを持っていないかな〜と背負っていたバックパックをおろし、手探りで何か無いかと探しながらとにかく気を紛らわせました。
もちろん、そんな状況で役に立つようなものは殆ど持ってきていないのですが(インターネットとか携帯電話等が無い時代)カバンの中から探り出した日本に居る間に手に入れていた数少ない資料とかガイドブックを出し、何か参考になるものは無いかと、とにかく必死だった。
もって来ていたガイドブックはどれもソ連時代のもので情報が古い上に、旅慣れていないバックパッカー用の適切なアドバイス等皆無で、タリンの見所や観光プランを読んでみた所で役立つはずも無く、多少パニクッているので落ち着いてそんな情報さえも見られず、いよいよ追い詰められていました、、、
どの位経ったでしょうか、「もしかしたらもう友人は迎えに来ているかも、、、」と少しでも前向きになれるような事を考え、エスカレーターを降りて様子を見に行くことにしました。
下に下りてみると、公衆電話のコーナーには先ほど居た人数よりも減っていてもう数人位しか居ない感じ、、一人が掛けて他の人は待っている状態(確か公衆電話は一つだったと思う、、)それを見て、ものすごい緊張感と不安感が襲ってきました、、、「あの人達が居なくなったらこのターミナルには俺一人ぼっちなのか??」、、、と思うと鼓動が高まり不安に押しつぶされそうでした、、、
外へ出てみると、先ほどと同じ光景、、、タクシーが何台か待っているだけ、、、友人が来ている気配は無し、、、「来るか来ないのか分からんのに待っていれば何とかなるのか、、う〜ん、もうこうなったら自力で歩いて何処かへ行くか!?」、、、と、もう多少やけ気味になって少し外を歩いてみましたが到着ターミナル周辺は商業施設などは一切無く、ただ薄暗い倉庫街のような殺風景な冷たく寂しい(としか見られない心理状態、、)光景で、何処にどう行けば何があるのかも分からず、又もし分からない所へ迷い込んでターミナルにさえ戻れなくなったらもうどうしようもありません。
5分ぐらい歩いて臆病風に拭かれてそそくさとターミナルビルに戻る情けないボクでした、、、とにかく何らかの助けが必要だったのですが、その助けを求めるにしても会話もままならないボクの未熟な英語、、で、エストニアは英語を話す国ではないという事、、彼らがどの程度英語を理解する人たちなのかが全く分からない、、、その上何らかの助けを求める事ができるかもしれない人達もターミナルからどんどん居なくなっている状況、、、無駄な時間を過ごしていた事がよりやばい事になりつつあったのは明らかでした、、、
ある種追い込まれていたボクは覚悟を決めて、電話をする為に待っていた人に、「友人に電話をかけたい旨伝えて何とか友人とコンタクトを取りたい、、、」という事を訪ねてみることにしました。
今となってはその時の詳しいやり取りはすっかり抜け落ち(多分相当テンパッていてハイで無我夢中な状態、、、ははは)何かをそこに居た人に聞いた、で運良く英語を理解する人が居て返ってきた答えで唯一理解できた事は、「この公衆電話からタリン市内?の通話は無料?らしい」という事、、、何!マジか!?、、、そう言えば今掛けている若い男はいきなり電話してたな、、、という事はお金が無くても友人に電話が掛けられるのか??「なんだ、そうだったのか!!」、、、コンタクトが出来るかも、という事で急に希望がわいてきてちょっと力が抜けました。
で、早速ボクも電話をかける列に並び(確か一番最後だった)自分の番を待ち、一人前には若い男が友人と一緒で電話をかけていました。その男が電話をかけている間にボクの友人のマレから教えてもらっていたタリン(と思われる)連絡先を確認してその電話番号がタリン市内局番だけなのか、市外局番が含まれているものなのか分かりませんでしたが、とにかく掛けてみるべき電話番号はあったのでまずはその番号を試してみようと思っていました。
電話をしていた若い男が話を終えて受話器を戻して横にどいたので、早速受話器をとってみて耳にあて、聞こえてくる音を確認すると確かに「プー」と日本の音とは違うけどダイヤル準備OKみたいな音が聞こえてきます、お金は入れていません、、初めて聞く音だけど多分「プー」と連続してなっているので掛けられるのだろうと理解しました。
で、メモしてある番号に早速ダイヤルしました(プッシュ式ではなくダイヤル式だった)ダイヤルし終わってドキドキしながら(頭の中で何を言うかを一生懸命暗唱しながら、、)耳をダンボにしているとダイヤルし終わったのに何も呼び出す音が聞こえてこず、何の反応もありません、、、、「あれ?間違えたかな?、、、」、、、更にもう一度、、、ドキドキしながら誰かが出るのを待っていると、、又同じ、、、「あれ、、、番号は間違っていないよな」、、、、念のためもう一度、、、、、、又同じ、、、多分1〜2分位の間に何度も試していたと思います、、、
ガ〜ン、、、「電話できないじゃん、、、、」この番号が間違っているのか、或いは電話の掛け方が間違っているのか、、、うゎ〜、、、やっと何とかなると気を持ち直した所なのに又奈落の底に突き落とされかけている感じでした、、、
もしかしたら市外局番が必要なのか、、、一旦電話を離れて急いで以前エストニア人達に日本で会った時に書いてもらった連絡先をアドレス帳から見つけ出し、見つけた番号とマレから教えてもらった番号と見比べ、番号が長い所は市外局番らしく、もう何でも試すしかないと焦っているので市外局番らしいものを加えて又掛けてみました、、、
が、、これも又同じ、、、何の反応も無く掛かりません、、、、まぁ冷静に考えれば電話番号を知っている友人達はタリンに住んでいませんからタリンへの市外局番じゃないのでその番号は無意味なんだけど、、とにかく藁をも掴む様な状態だったのでそこまで頭が回っていませんでした、、、本当に無料で掛けられるのか?、、無料用の掛け方でもあるのか?、、、エリアが限定されているのか?、、
そんな高級な質問など英語で出来るはずも無いボクとしてはもうどうしようもない状態でとっさに思ったのはたまたまそこに居た若い男に「お金を恵んでくれないか?」と頼んでみようと思った事でした。
人間切羽詰れば結構思い切った事も出来るようになるようです、大した英語もしゃべれないくせに、見ず知らずの若い男に夜の夜中こんなターミナル辺りにうろうろしているやつはやばいかもしれないのに、電話する事で頭いっぱいのボクはもうそれ何処じゃないって感じでGive me chocolateならぬ「コインをくれないか???」と思い切って頼んでいました。
するとこの若い男、驚いた事に俺の状況を理解したのか無言でエストニアの小さな硬貨らしいものをくれるじゃありませんか!!!、、、俺の気持ちが通じたのか?、、、フィンランドの小銭とは違う、、、という事はエストニアのものの様だ、、これで電話できる!!、、なんてやさしい良い男だ!
感謝、感激、感動しながら「サンキュー!!!、、助かった〜、、、」大袈裟ながらに命の恩人みたいな気分だったので手元にあったフィニッシュマルカ(フィンランドのお金)の小銭をその彼に「これはフィンランドのお金」とあげていました、、、地獄に仏とはこんな感じなんでしょうか。
たった一枚だけど貴重な小銭、、、日本円もアメリカドルも、更にはフィンランドマルカもあるのに電話できないもどかしさ、、、、もらった小銭で電話できるかどうかも分からないのにもうできると信じきっていました、、、再度公衆電話に向かい、受話器を取って音を確認、ここまではさっきと同じ、そこで小銭を入れてまずはマレに教えてもらっていた番号に電話してみました、、、
すると、さっきとは違い呼び出し音が出るじゃありませんか!!!「おーーーっ!掛かってる!」、、焦って何を言うかを忘れていたボクは、呼び出し音が鳴っている間にとにかく頭を落ち着かせ、何をどう言うべきかを必死に思い出していました。
海外で、しかも外国人に英語で電話するなどというのは生まれて初めて、、これまで体験した事の無いようなものすごい緊張感を味わっていました、、、
どの位呼び出し音がなったでしょうか、電話の向こうに英語で普通に「ハロゥ」(エストニアでもなぜか電話に出る時はハロゥとでる、、)と女の人の声、、、「うゎ、誰かでた!!」、、、とにかく自分が誰なのかを名乗らねばなりません、、、、、で、多分名乗ったと思います、、、多分日本人であるとか場所とか状況も言ったかもしれません、、、でも何を言ったのかはすっぽり抜けてしまっています、、、ははは、、、
覚えている事と言えば何か英語らしき?音の言葉で電話に出た女の人が返してきている、、、しかし友人のマレではなみたいだ、、、殆ど聞き取れない、、、まずい、、、
もし何かのイタズラ、或いは間違い電話だと勘違いされたら一巻の終わり、、、ボクが発した英語?が伝わっているのかも確認できず、相手が何を言っているのかが殆ど分からない絶体絶命の状態、、、、切られたらジ、エンド、、、何とか必死に自分がマレの友人だという事も言ったかもしれません、、、
するとその女の人の声が聞こえなくなり何処かへ行ってしまった様子、、、「あれ?どうしたんだ?、、、」でも受話器は戻していないので繋がっています、、、耳を受話器にあてて必死に様子を聞いていると、誰かが近づいてきている音が聞こえてきました、、、
そしてさっきとは別の女の人が電話に出ました、、友人のマレでした、、、、既に夜中遅いのでもう来ないかと思っていたらしい(マレは俺がフィンランドについたら電話掛けてくると思っていた、、)、、なぜかマレの英語は多少解り、どうやら今から30分後位に船のターミナルへ迎えに行く、と言っている様でした、、、、、、路頭に迷わずに済んだ、、、何とかなった、、、マレは本当に俺を待っていてくれた、、、良かった、、、再会できる嬉しさももちろんあったのですが極度の緊張と不安感から開放された安堵感からか急に疲労感に襲われていました、、、
つづく
エストニアとの出会い 「ついに再会」